2008年04月04日

フリッツ・ヴンダーリヒの芸術性の秘密

20世紀最高のテノール歌手と言われたヴンダーリヒだが、若くして事故死したためその録音された歌以外にはほとんど知らなかったが、このDVD「ライフ・アンド・レジェンド」で彼の生い立ちや知られざる人柄とその芸術性の軌跡について初めて知ることが出来た。

最も印象的だったことは、オペラ歌手からリート(ドイツ歌曲)歌手への転向の際、その苦悩と努力が彼の伴奏者としても知られるギーゼンの口から語られたものだった。

正直、あれ程素晴らしいシューベルトやシューマンの歌曲集を残してくれた彼がそれをものにするのに大変な努力があったとは思いもよらなかった。
天性のものと思っていた歌唱力も初めはギーゼンから徹底的に否定され、一からやり直すほどの努力を行っていたのだ。(その練習中の録音が聞ける)。
その結果、後にギーゼンから彼は完璧で何も言うことはないと語るまでに至る。
我々はヴンダーリヒを指導したギーゼンにも感謝しなければならない。

さて、このDVDには彼を知る友人や音楽家達がインタビューに登場している。
ヴンダーリヒの親友でもあるヘルマン・プライや20世紀最高のバリトン歌手のディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウも登場している。

プライの場合は友人としての仲の良さがよく伝わってるが、フィッシャー=ディースカウのインタービューは「あれっ?」と言う感じで他とちょっと違う。
彼のはヴンダーリヒを褒めている箇所がない。
批判をしているのではないが、お世辞も言わない。言わば宿命のライバルだから上手いのは当然で今更自分が言うことではない、とでも言わんとしているかのようだ。
彼とヴンダーリヒがカイベルトの指揮でマーラーの「大地の歌」を演奏した時(この時のライブがCDで出ている)のエピソードを語っているのが、唯一二人の間柄が良好だったことを感じさせてくれるものだ。

補足:-----------------------------------------------
これを書いた後「自伝、フィッシャー=ディースカウ 追憶」を読む機会があり、そこに書かれたヴンダーリヒとのエピソードを知ることができた。フィッシャー=ディースカウはヴンダーリヒの声をはじめて聞いたとき仰天したそうだ。引用すると「・・・それを聞いて私は仰天した。声にうっとりするほどの艶があり、加えて、そこには不可欠な要素である金属的な輝かしい響きがごく少量ながら含まれていたからである。これはドイツ語のテノール歌手からは、もう長い年月聞かれたことのなかったものであった。」、感動したフィッシャー=ディースカウはレコード製作者に繰り返し訴え、その結果ヴンダーリヒの最初のレコード録音が実現されることになったそうだ。
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またドキュメンタリーのなかではカラヤンとの比較をしているところがある。
芸術的には両者は良好だったが、嗜好やスタイルでは正反対だとある。カラヤンは都会的でヴンダーリヒは牧歌的な生活スタイルを望んだ。
実際ヴンダーリヒがプライベートで撮影したビデオ映像には田舎で暮らすメタボ気味の人の良いおっさんとして登場している。

ライフ・アンド・レジェンドライフ・アンド・レジェンド
ヴンダーリヒ(フリッツ)


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posted by なっちゃん at 12:34| 静岡 ☀| 音楽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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